プロポーズも成功していたが…30代のイケメン国家公務員が一発でフラれた"あるひと言"(PRESIDENT Online)
お見合い申し込みが殺到した30代の“しょうゆ顔イケメン”
昔流行った言葉で言えば、しょうゆ顔のイケメンだ。38歳、身長175cm、仕立ての良さそうなスーツに身を包んで面談にやってきた。
実際に話してみると、ボソボソと小声で、何を言ってるんだかよく聞き取れない。「今、なんとおっしゃいましたか?」と何度も聞き直したほどだ。マッチングアプリ、婚活パーティーなど、ありとあらゆるサービスを利用しても今まで結婚できなかった理由は、きっとこの話し方のせいだろう。
カウンセラーが手取り足取り世話してくれるという結婚相談所のサービスを、最後の砦(とりで)とやってきた。一人暮らしで家事もひと通りこなせるそうだし、仕事も都内から転勤はないという。住まいは、現在は賃貸だが、結婚したら都心に分譲マンションを購入予定。
「これまで、何人の女性とお付き合いされた経験がありますか?」
婚活していくにあたり、会員にさまざまなアドバイスをするわけだが、交際経験がある程度ある男性には、デートについてのアドバイスは不要。交際経験がなければ、どんな場所でデートしたら良いか、女性はどんなことが好きか、女性にどんな言葉を言えば良いかまでを、教えなくてはならない。彼は、過去の交際人数をふたり、と答えた。
ふたりと答えたということは、ひとりかもしれないし、場合によってはゼロかもしれない。だが一応、ふたりという交際経験を信じることにして、彼のプロフィールを登録した。登録するやいなや、彼へのお見合い申し込みは殺到した。
一般企業勤務の女性との真剣交際がはじまったが…
初婚でイケメンの国家公務員を、婚活女性たちが見逃すわけがない。女性のほうが、したたかに条件面を考える。プロフィール画面の行間まで、しっかり読み込む。それに対して男性は一般に、女性の顔しか見てない。写真しか見てないのだ。
初婚なのに、ごくまれに子どもがいる女性の登録もあるから、しっかり見てほしいのだが。だが、この国家公務員の男性は、さすが婚活マスター。お相手女性のプロフィールをくまなくチェックする。
「できたらひとりっ子のお嬢さんは、避けたい」
とも言っていた。現代はひとりっ子家庭が非常に多い。ひとりっ子を除いて相手を探すとなると、選択の幅を狭めることとなる。ひとりっ子は親に大事にされて育っているから、親を大事にする。しかも、財産分与でもめる可能性はゼロだ。ひとりっ子を避けたいという会員に、こう説明すると、なるほどそうですよね、と納得いただけることも多い。
彼からのお見合いの申し込みを受けていただける確率は、非常に高かったし、先方から山のように来た申し込みから吟味して、10人ほどの女性とお見合いをした。
半分ほどは、かのボソボソとした話し方のせいかお断りされたが、半分の5人の女性と仮交際になった。初デートで3人の女性からお断りされ、残るはふたり。監査法人に勤める公認会計士と、一般企業のOLだ。このうち、一般企業勤務の美人と、真剣交際に突入。
彼女は、彼の希望では避けたいと言っていた、ひとりっ子で、両親に加え祖母も同居している。非常に堅実で、何事にも行き届いた申し分のない女性。彼は勉強もよくできたし、過去に学んだことはきっちりとできるが、未経験ゾーンについては、からっきしダメ。どのタイミングで彼女にプロポーズすべきか、どんな言葉で告白するか。用意周到に私とミーティングを重ねた。
「クリスマスだから、なんでも好きなもの買っていいよ」
汐留シティセンターにある、東京タワーの夜景が見えるレストランで、ブルガリのエンゲージリングを用意し、プロポーズ。彼女の返事は、もちろん「YES」。ふたりは、めでたく成婚退会した。
入籍の時期も、結婚披露宴についても、プランは考えてある。何しろ、計画性の高い、用意周到な国家公務員だ。勉強ができるオトコは、学んだことには強い。ふたりで迎える初めてのクリスマス、彼らは、新宿のおしゃれな焼肉屋さんで、昼からイブを楽しんだ。
結婚が決まり、リラックスしたせいもあるかもしれない。飲み放題つきのランチコースにしたため、昼過ぎには、彼はかなりの酩酊状態。その足で、彼が彼女を連れて行ったのは、新宿伊勢丹。ハイブランドがずらりと並ぶデパートで、彼は彼女にこう言った。
「クリスマスだから、なんでも好きなもの買っていいよ」
高価なブランドものよりも、堅実な男性との生活を求めていた
だが、地に足が着いた聡明な彼女が、彼に望んでいたのは、高価なブランドものを買ってもらうことではない。堅実な男性と健全な家庭を築き、可愛い子どもを育て、計画的にお金を貯め、お金の心配のない老後を過ごすことが、彼女の希望なのだ。飲み放題とはいえ、昼間っからお酒をしこたま飲んで、お金に糸目をつけずに、女性にプレゼントするような男性を、素敵だと思えなかったのだ。
ふたりのクリスマスも、結婚の約束も、この新宿伊勢丹を境に「THE END」。ブルガリのエンゲージリングは、彼のもとに宅配で送り返され、以来ふたりは一度も会っていない。彼にクリスマスとプロポーズについてのマニュアルを作って渡していなかったことを、カウンセラーとして反省中である。
「会いたい男性はひとりもいない」と語る年収900万円の50代女性
彼女は50歳。大学を卒業以来勤める大手企業の管理職として、何十人もの部下を従えている。年収は900万円。20代に離婚経験があるが、子どもはおらず、見た目はマイナス10歳くらいの印象だ。先日、成婚退会した女性会員からの紹介で入会した。紹介してくれた会員が、とても素敵な男性と結婚したので、入会すれば素敵な出会いがあるのだろうと、期待に大きく胸を膨らませていたらしい。
「男性の収入にはこだわりません」と言っていたし、女優の檀れいのように美しいから、彼女さえその気になれば、人生の伴侶はすぐにも見つかるであろう。早速婚活をスタートした。入会後、プロフィールが掲載されてから会員がする最初の活動は、自分の希望に合う異性を検索すること。
サイトには、写真や年齢はもちろん、男性の場合は年収、学歴、婚歴、現住所と出身地、職業、趣味、家族構成などに加えて、自己紹介文や、カウンセラーからの推薦文が掲載されている。
「ひとりもいません」
彼女は、婚活サイトにいる、自分の年齢前後の男性はくまなく見たが、会いたいと思える男性は、ひとりもいないのだという。
「この場合、どうしたらよいですか?」
第一線で働く彼女は、自分にも他人にも厳しい。配偶者ともなれば、彼女のお眼鏡にかなう男性は、相当にハードルが高いのであろう。それならば、「年齢に関係なく会いたいと思う男性にお申込みしてみては」と言うと、彼女が選んだ男性は全員10歳以上年下のイケメン。10人ほどに申し込みを入れてみたが、さすがに年下すぎて成立せず……。婚活は、とにもかくにもお見合いをしなければ始まらない。プロフィールだけではわからない良さが、会ってこそわかることもある。
50代になっても恋愛経験は20代で止まっていた
話してみれば、意外なほどすてきと思える男性も(その逆も)いる。申し込みいただいた中から、彼女がお見合いを承諾した男性が3人いた。
彼女は、お見合い相手にも、仕事ができるバリキャリ女性そのままの立場を崩さずに会話をする。相手が謙遜して発言した言葉を、自信がない表れと評価し、相手の仕事に対する取り組み方を問いただしたりするのだから、上司との人事評価面談さながらである。自分より優れたところがない男性には、彼女は興味が持てないそうだ。
彼女は、27歳の時に恋愛結婚をしたそうで、結婚後はさらに相手を大好きになり、その最高潮に大好きだった時期に、相手に他に好きな人ができて、1年で離婚を切り出されたそうだ。ご主人はとてもすてきな男性で、彼女に愛の言葉をささやき、花束のプレゼントやお姫様抱っこをしてくれる、王子様のような人だったという。離婚して以来、長く特別な関係でお付き合いした男性はいない。つまり彼女は50年生きてきたのに、恋愛経験は20代で停止したままである。
彼女の理想の男性は元ご主人で、彼女がまた結婚したいのも元ご主人のような男性。結婚相談所に入会すれば、白馬に乗った元ご主人のような男性に会えると妄想していた。残念ながら、彼女の高い理想の壁を越えられる男性とのご縁は難しい。
「いろいろ考えたんですが、これは私が悪いんだと思います。自分の理想が高すぎるのです。ここの婚活が合わないというより、私は相手男性のいろんなことが気になってしまい、きっと結婚できないと思います。いろいろ考えていただいたのに、ごめんなさい」
彼女は、3カ月で退会した。
結婚カウンセラー